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反省したってもう過去を取り戻すことは出来ない。これ以上何も言えなくて、言葉の代わりに涙が出てきた。
「もう、泣かなくていい」
柔らかな声と共に、頬に触れていた手が優しく涙を拭ってくれた。
「咲希は、充分苦しんだんだろ。咲希はもう、前を向いていいんだ」
アオ君?
柔らかな瞳がわたしを包む。アオ君の手が、わたしの手を取った。
「この手に、指に、咲希の人生がかかっているんだろ。いや、咲希が背負う使命が、この指に乗っているんだ。だから、弾けよ。咲希は、前を向くべきなんだ」
「アオ君……」
アオ君の指が、わたしの指に優しく絡まる。フッと笑ったアオ君が言う。
「才能を持った人間の宿命ってやつか」
「そんな……」
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