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アオ君は、どうして今こんな話をしたのだろう。アオ君は、どちらか側の人間だったのだろうか。アオ君の言葉一つ一つは、まるで実体験があるんじゃないか、と思わされるほど重みを含んでいた。
眼の前にいるこの青年は、少年の感性を持ったままの、本物の大人の男だった。
アオ君も、誰かを〝許した〟のだろうか。誰かを〝許す〟事で乗り越えてきたものがあるのだろうか。
少なくともわたしは、許しを請う側の人間だった。
抱き締めてくれていた腕を緩めたアオ君が、わたしの眼を見て頬を拭ってくれた。
少しの間見つめ合って、アオ君がフッと笑った。え、なに? と構えると。
「その友達は許してやれるか?」
「ともだち?」
「友達じゃねぇな。後輩か。婚約者を取ったのは」
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