必要なスキルとは

6/10

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
 わたしは、ああ、と苦笑いしてしまう。論点が微細にズレて、最初に何を話したか忘れてしまっていた。そもそもは、そこから始まっていたのだ。  許すも何も、許しを請うべきは誰なのか、分からなくなっていた。大事な核を詳しく話せない自分が歯がゆい。  わたしが黙ってしまっていると、アオ君の手が頬に触れ頭を撫で、髪を梳いた。触れる指先から痺れをもたらす。これは愛しさだ。熱が身体中に伝わって胸が震える。  目と目を合わせ、気付くと、アオ君の大きな両手がわたしの顔を挟み、指が耳に触れていた。 「咲希」  低く、甘い響きを持った声がわたしの中にダイレクトに響いてくる。思わず「はい」と応えたわたしにアオ君はいたずらっぽく笑った。 「その元婚約者に未練がなければ、許す!」 「へ?」
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加