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〝春樹〟という名字が〝苫小牧〟という地名と結び付いた時、アオ君の中である人物との合致を見たのだろう。ある人物、というのは紛れもなくわたしの弟、春樹陽介。
アオ君は、わたしが、春樹咲希が、自分の父親を死に至らしめた犯人の身内である事を悟ったのだろう。
事件が起きた時、わたしは日本にいなかった。陽介が捕まったという連絡が来て、警察からも国際電話で聴取を受けた。
逃げるようにドイツを去って帰国したわたしを、母は苫小牧から遠ざけた。わたしが、春樹家の人間、つまり加害者家族である事を世間から隠す為に。
弟が事件を起こしたのは、わたしと母のせいと言ってもいい。それなのに、わたしは逃げたの。弟が起こした事件という現実を直視する勇気がなかったのだ。
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