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中島公園の中にあるコンサートホールkitara内のレストランは、雨の月曜日のせいか、静かだった。平日でも公演等があれば賑わっているのだけれど、今日は何もないようだった。
奥の窓際の席に通されたわたしと彼女は、コーヒーだけ頼み、暫しの間互いの出方を窺うように黙って視線を交わしていた。
一面ガラス張りとなっているテラス造りのレストランは、天気の良い日は差し込む陽光に明るい雰囲気となるのだけど、雨に曇る今日は外からの日差しも少なく、お客さんも少ないせいかどこか暗い。わたしと彼女との間に流れる重く息苦しいような空気とリンクしているようにも思えた。
最初に口を開いて重い沈黙を破ったのは彼女、佐藤さんの方だった。
「あたし、苗穂にあるK病院で働く看護師なの」
はじめましての挨拶もなく最初からタメ口で、しかもいきなり自分の職と職場を明かした。
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