2人が本棚に入れています
本棚に追加
その練習の翌日のライブで。
「あ、拓真君だ」
スーパーロング黒髪の鈴さんが
俺の姿を見た途端に
ゆっくりと駆け付けてきた。
「黒川から聞きました。やっと動き出したと思ったら、まさか相手が拓真君だったなんて」
それこそ鈴の鳴るような
特徴的な響きを持つ声で、
鈴さんはダルそうに微笑んだ。
「俺もびっくりしました。特定の友達の事がたまに話に出て来てて、それが鈴さんだったんですよね」
「すごい長い友達で。クロミがいなくなったら私、友達いなくなるって位の。・・・ひょっとしたら私に遠慮してたのかな、ボーカルやるの」
「あぁ、それ、あるかもですね。自分より人を優先させそうな感じしますね」
そこで何となく、
会話が途絶えた。
さて、何を話すべきか。
スムーズに言葉が続かないのは
相手に何の興味も沸かないからだが・・・
「Richelも2回ほど見てるはずですよ。ドラム激しいから!って勧めてたんですけど」
結局、相手が何か
うまく話題を振ってくれて。
それでもやはり会話は続かない。
「ううん・・・Richelについては何も言われてませんね。今度聞いてみます」
きれいな人だな、
という印象は話してみても
変わらなかった。
どことなく七瀬さんと似た
柔らかい物腰を感じられたが、
それだけ。
鈴さんはそのままリハに呼ばれ
俺は軽く頭を下げて
その場から去った。
最初のコメントを投稿しよう!