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「あれ、今日あの子は?」 サクラさんが袖から客席を見渡す。 「今日は来てません。仕事で身動きとれないらしいです」 ライブ仕様にばっちりメイクして シークレットシューズで 身長なんて10cm以上伸びたこの人が あんな変態だと知っているのは 内部の関係者だけ。 ファンからすると カリスマ的にカッコいいらしい。 「え"~~~、俺めちゃくちゃ気合い入れて来たんだけどぉ」 「どちらにしろ主婦ですから、2日も続けて夜遊びされませんよ」 ムクれた子供のように サクラさんは壁をコンコン蹴った。 この人が一番、 七瀬さんを高く評価していた。 「あ~あ、俺ちゃんと髭剃っていくんだったなぁ。あんなかわいい子が来るなら早く言えっつうの」 「・・・タイプでしたか」 「分かんない。でも歌は正直ホレたなぁ・・・しっかもあのスタイル!やばくね?勃つかと思った」 「・・・そういう対象にしないで下さい」 「ここだけの話、ディルをあんなに全力で演れたの初めてだったしさ。一平さんでもシャウトで楽器隊のモチベーションまでは上げられないじゃん。それなのに普段は癒し系なんてさ、ハマっちゃったよ俺ェ。ギャップたまんない」 ・・・俺はうっすら後悔していた。 本当にやりたい事をしている、 という充実感や 華やかな場所に出ないといけない、 という責務を負った事で 彼女の輝きは少しずつ増していた。
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