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この地元で先を考えずに 好きなようにバンドをしていくなら 七瀬さんはベストだ。 ゆるく長く楽しく ずっと付き合っていけるだろう。 けれどRichelのメンバーは 俺の昔からの夢を、目的を、知っている。 そして同時に 俺の音楽が世に出回る事を 望んでいる。 まるで自分達の分身に 夢を託すような気持ちで。 もっと シビアにならないといけないだろうか・・・ 家庭の問題は 俺にはどうにもできないが 得意な分野は絶対に違うのだ。 俺には七瀬さんを活かし切れないし 逆に俺も どこかで不満が募ってゆくのだろう。 そもそも。 彼女はどんな音楽がしたいのだろう。 たまたま俺に曲があったから 今はそれを深めていく作業を しているに過ぎない。 もし合わないんだったら 早いうちに辞めないと時間が無駄だ。 でも俺には、 彼女を切り捨てる勇気がない。 どうしても冷徹になれない。 人を失う事が あんなに優しい時間を失う事が 俺にはものすごく怖かった。
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