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雨降る夜は、人も通らず、音と言えば、時折通過する車の音だけだった。濡れた身体に、触れ合う唇からアオ君の熱が流れ込む。髪を梳いてくれる指から、痺れと甘さが浸透する。
長いキスから、互いにゆっくりと唇を離したわたし達は再び目と目を合わせた。アオ君は、両手でわたしの顔を挟み、静かに言った。
「傘は、冬香から渡された」
ハッと息を呑んだわたしに向けられたアオ君の眼は、真っ直ぐで真剣な眼だった。
「嫌な想いさせたんだな」
アオ君は、わたしと額を合わせ、目を閉じた。
「悪かったな。冬香とは、ちゃんと話しをしたから」
胸が息苦しさに潰れそうだった。
傘を持って行ったのは冬香さんだった。
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