溶け合う

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 すすきので偶然会った時に鼻先を掠めた香りは、病院の匂いだった。アオ君は、医師だったんだ。  今、直に感じる肌に微かにあの時の香りを感じ、背中に回した手に力を込めた。顔をアオ君の胸に埋める。  触れ合い密着した肌からアオ君の体温が徐々に伝わる。冷え切っていたわたしの身体が優しく包み込まれていた。 「……あったかい」  温もりは安堵をくれる。無意識に口からこぼれた言葉にアオ君が、甘い声で「咲希」と呼んで答えてくれた。耳に吐息がかかってわたしは首を竦めた。  ベッドの中に潜り込んだわたし達は互いを求めて手を伸ばし、指を絡めた。  アオ君の手を感じる。指を感じる。触れたところから熱が伝わる。躰を抱きしめてくれるアオ君をわたしもギュッと抱きしめた。
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