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流れを作る源流を作ったのはママだから。〝わたし〟を生んでくれたのは紛れもない、ママだったから。
例え会うこと、話すことが出来なくなってもピアノを弾く事でママと繋がっていられる、そう信じてピアノを弾き続けていたはずなのに。
過ぎ行く年月に流されて翻弄されたわたしからは大事なものが抜け落ちた。そんなわたしの中に残ったのは、〝拘り〟と〝しがらみ〟だけだったんだ。
歩いてきた道そのものを見ないようにするだけでなく、わたしはルーツを、源流そのものを封印しようとしていたのかもしれない。
わたしの精神は十三年前で止まっていた。わたしは、母が見送ってくれたあの時から少しも成長できていなかったんだ。
「咲希」
俯くわたしの頭をアオ君がそっと撫でた。
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