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「泣くなって。母さんは、ちゃんと元気になる。だから咲希は母さんの生きる力を信じてやってくれ」
ゆっくりと言い含めるような声がわたしの胸に深く響いた。傷口にそっと触れるような優しい声だった。
ママの声が聞きたい。ママと話しがしたい。ママに、またピアノを聴いて欲しい。そして何より、今度は逃げないから。陽介の事、今度はママと一緒に向き合いたいから。
「信じるわ。ママの生きる力を。だからアオ君、ママを助けて」
わたしは改めてアオ君に頭を下げた。
「お願いします」
アオ君はわたしの頭をクシャッと撫でて言った。
「絶対助ける。だから、俺のことも信じてくれな」
顔を上げると、口の端をちょっとだけ上げて不敵に笑うアオ君と目が合った。わたしは思わず苦笑いしてしまう。
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