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全ての事件は、十五年前の父の自殺に端を発していた。
死後、財産がが何も残っていなかったから、何かあった事は分かったけれど、遺書も何も残っておらず、はっきりとした原因を知ることはできなかった。ただ、そこまで追い詰められていたことに気付いてあげられなかった、という後悔だけが、残されたわたしたち家族の中に暗い影を落としていた。
そう思っていたのだけど、父と最後まで一緒にいた陽介は、知っていたのだ。父を追い詰めたもの。父を自殺の原因となったものを。
父は騙されたていたのだ。ある商売を持ち込まれ、乗せられて借金を作り、商売道具であるすべての財産を失っていた。
父は、傍にいなかった母に何も相談できず、一人思い悩んで、絶望して、自殺した。弟だけが真実を知り得、原因となった建設会社に押し入ったのだ。
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