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黒い噂の絶えない建設会社の社長に目を付けられてしまった陽介は、不利になると分かって警察で何も言えず、科を受けるしかなかった。何も言わなかったのは、わたしと母の為でもあった事が分かって胸が締め付けられた。
「ごめんね、ごめんね。こんなお姉ちゃんで、ごめんね」
涙が止まらなくなり、ベンチで蹲って泣くわたしの背中を陽介が撫でてくれた。
「いいんだよ。父さんにとっても、俺にとっても、姉ちゃんは希望だったんだ。大事な、夢だったんだ。だから、父さんも守ろうとしたし、俺も守ろうとした。上手くいかなかったけど」
弟の言葉の最後に、力ない笑いが混じる。
やっぱり、陽介は優しい子だった。
人の想いなんて、家族だって口にしなければ分からない。
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