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「店長サンっ、ここ大事なのっ」
ホールにいるスタッフの視線を気にしながら小声で店長サンをたしなめた。店長サンはまだ笑いの残る顔で手にしていたタンクをセットして、言った。
「心配はしてなかったよ」
どうしてそんなに信用してるの? 首を傾げたわたしに手を休めることなく店長サンは続ける。
「咲季ちゃんにはアオ君という人がちゃんといるし、それより何より、彼には婚約者がいるらしいから。分別ある大人である君たちを信用して、ここを君たちの大事な再会の場に提供したんだよ」
店長サンの言葉はどれもそれぞれの重さを持ってわたしの胸に落とされた。
大人であること。
〝あのあと〟、当然わたし達の間にキスという既成事実すら生まれなかったのだけど、もしかして。
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