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「店長サンは、人が悪い」
「え?」
「なんでもない」
店長サンは、試したのかもしれない。
瀬戸際に立ったとき、信用と信頼の上に立ち、それを裏切らない大人でいられるかどうか。わたし達が越えなかった一線は、大人であり続ける為の大事な一線だった。
ただ。
そんな風に思う中で〝玲君に婚約者がいた〟という言葉だけが異質な重みを持ってわたしの中に残り続けた。
なんとなく、分かってはいたことだったけれど、必死な言い訳を、自分自身にしていたのかもしれない。
「咲希ちゃん」
考え込むわたしに店長サンが話しかけた。顔を上げると、店長サンは仕事の手を休めることなく言葉を継いだ。
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