計らいか、それとも

7/8
前へ
/38ページ
次へ
「僕があのサプライズを強行に決行したのには理由があるんだよ」 「理由?」 「そう。彼、来月転勤が決まったんだって。だから、このまま二人は会わなかったら一生会えないかもしれないな、って思ってね」  早鐘のように打つ鼓動が頭にガンガンと響いてる。 「どこに、って言ってた?」 「ああ、行き先ね。九州だったよ。確か、熊本だったかな」  胸をひと突きされたような感覚を覚えた。まさか、弟の事件が? と震えそうだった。  確かめたい。謝らなきゃ。  でも、わたし達は互いに連絡を取る術を持たない。敢えて持たなかった。  会いに行くどころか、メールすら出来ない。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加