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わたしの中の記憶が鮮明に蘇って目眩を覚えた。
大事なものがこの世界から消えてなくなりそうな恐怖を覚えたあの時。一瞬だって忘れたことのない記憶だ。でもきっと、玲君はわたしの何倍もの苦しい記憶を背負って生きてきた筈だ。
玲君、今ここにいて、大丈夫なの。
「玲君……」
声が掠れ震える。
玲君の心を想うと張り裂けそうになる。心の中で何度も玲君の名前を呼んでいた。
「あなたは、昔と少しも変わりませんね」
「え?」
柔らかに微笑む玲君にわたしは首を傾げる。
「昔から、泣いてばかりです」
「あ……」
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