春・大通り公園

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 手で頬に触れてみて、濡れていることに気付いた。慌てて両手の平で頬を拭う。 「泣いてなんていないんだから」  泣いていたら、視界が曇ってあなたを見られないもの。これが夢と消えてしまうかもしれない。  でも、でも――、 「あいたかった……」  我慢してきた。どんなに苦しい時も、あなたへの想いを断ち切ったのだから、と封じ込めてきた。わたしの奥底で無理矢理に眠らせた感情が今、解放されて、外に溢れ出した。 「あなたに会いたかったの、ずっと、ずっと、ずーっと!」  閉じ込めてきた想いを声にした瞬間、涙が溢れだした。
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