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「ずっとあなたに会いたかっ――」
気づけば、腕の中にいた。わたしは目を見開いて、全身の感覚を研ぎ澄ませた。
覚えてる。この腕も、頬に触れる胸も、全身で感じるこの感覚も。
玲君! 玲君だ!
「咲希先生!」
「玲君!」
わたしも腕を伸ばして玲君の身体を抱きしめた。背が高くて、わたしの顔はあなたの胸元にすっぽり収まってしまう。それなら、とわたしは思い切り伸ばした腕を背中に回してしがみついた。
ここが、公園だなんて関係なかった。平日の昼下がり、中心街から少し外れた十一丁目はそれほどの往来はない。今、わたし達の世界には、わたし達しかいなかった。
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