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首を傾げたわたしにあなたはクスリと笑う。
「そうです、二度も」
「一度目は?」
「十二年前。ここ、札幌で。僕の、初恋の人として」
「二度目は?」
「今です。十二年も掛かって、やっと忘れられそうだと思っていた時に」
優しい双眸に見つめられ、胸に、長い年月閉じ込めていた熱い感情がゆっくりと拡がり始めた。
「玲君……」
その名前を口にしたのは何年ぶりだろう。喉の奥に疼痛を感じていた。
ゆっくりと辺りを見回した玲君の視線がわたしに戻ってきた。そっと息を吐いて、言う。
「今僕がここに立っていられるのは、あなたを見つけたからです」
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