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「杏南、落ち着け」
「落ち着けるわけないでしょ!? やっぱり不安じゃない。いくら大丈夫って言っていても、百パーセントの成功率の手術なんてないんだから」
手術室へと母を見送り、現在、家族控室で待機しているところだ。
開始して、三時間は経っている。
予定では六時間程かかると言われたらしい。
それが一般的な長さなのか分からないから、余計に不安も大きくなる。
私の前に座る兄は確かに落ち着いていて、普段と変わらないように見えた。
「でも、大丈夫だと信じるしかないだろ。母さんなら、ちゃんと戻ってくるから。杏南、とりあえず何か飲もう」
おいで、と言って、兄は私の手を取って、控室の外にあった自販機まで連れて行ってくれた。
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