おかあさんのとなり

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「お兄ちゃんは、怖くないの?」 「ん? そりゃ、怖くないわけじゃないよ。俺だって、不安には思う。本当に何も思っていないのは、父さんだけだろ」 「そうだね。一回も表情を変えないお父さんなんて、きっと心配もしてないよね。先生に『お願いします』くらい言えばいいのに! 普通に頭を軽く下げるだけなんて。本当に、冷たい人」 「でも、とりあえず今日来ただけでも、父さんなりの気持ちの表れかもな」 「そんなわけない! 仕方なくいるだけだよ」 「せめて、俺が成人していたら違ったのかな……」 「あんな奴いなくても、何とでもなるっていうところを見せてやる! 家事だって何もできないし、お母さんの支えにだってなれないよ!」 拳を高々と上げるよりも一瞬早く、控室のドアが開いて父が顔を出した。 聞かれたかと、内心ぎくりとしたが、すぐにそれどころではないと知る。
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