第一章

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 悪意ある人間の策略で邪神とされ、長く封印されていた蛇神がいた。  八岐大蛇の息子って出生だから、先入観持たれるのも仕方ないかとは思う。俺個人は平和主義の穏やかな気質なのだが。  ていうか、ぶっちゃけ嫁さえいれば他はどうでもいい。東子がいれば満足。  俺を解放してくれた恩人ってだけじゃなく、男前なイケメン女子でクールビューティー、遺伝と修行のおかげで忍術やら魔法やら使えるし、メシマズ属性だし、鈍感なとこもなんとも……ノロケなら三日三晩余裕で語れるぞ。俺はそんな彼女にゾッコン(死語)だ。  とはいえ俺は神の端くれで、生きてた時代がかなり大昔。現代のJKとは感覚に開きがある。それゆえ悩みもあるわけで。  友人宅で寝そべり、携帯ゲーム機ピコピコしながらつらつら考える。  だらしない格好でも神レベルのイケメン(本物)なんで決まる。さすが俺。  擬態する必要がないんで、白い髪と青い瞳のままだ。  友人も同じく畳の上であおむけになり、ゲーム中。  比良坂士朗、訳あってイザナキノミコトの力の一部を授かった元人間だ。立場的に本人に準ずる形で、しかし本物でも人間でもないことから中立な第三者としてトラブル解決を請け負っている男である。つーわけで今回頼ろうかと。  ちなみに二人協力プレイで期間限定クエスト中だ。 「……なぁ、士朗。相談があるんだが」 「何だ?」 「恋愛関係で」  士朗がうろんげな目を向けてくる。 「なぜ俺に聞く」 「現代人の嫁がいる既婚者はお前しか知らん」 「俺は独身だ。桃は義妹」 「神の間じゃお前はあの子の夫扱いだぞ。あの子の持つ力からいっても、保護の観点からいってもな」  士朗が苦虫をかみつぶした。 「桃は子供だ」 「実年齢は12だろう。昏睡状態の成長停止が原因で6歳に見えるだけで。年の差気にしてるのか? たかだか10歳くらい。それ言ったら俺と東子なんて軽く千は離れてるぞ」 「……千超すととたんにどうでもよくなるな」  だろう? 「そもお前たちはもう人間じゃない。人としての年齢など無意味だ。……それはともかく、この前東子に怒られた意味が分からないんだ」 「どうせろくでもないことしでかしたんだろ」 「本来の姿で巻きついてたんだよ」 「それ、九つの首としっぽがある大蛇だよな。甘えてるって風に見えない。完全にパニック映画だ。よく彼女気絶しないな」 「東子はかっこいいからな!」
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