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第二章
「東子ー、ホワイトデーのお返し何がいい?」
本人に聞いてみた。案の定クールな返事。
「何もいらない」
「そう言わず。豪華客船クルージングでも南の島のバカンスでも花火打ち上げでも何でも叶えるよ?」
「そういうこと言い出すからいらないっつってんの。思考回路乙女か」
それでも俺がしつこく聞くから、
「……じゃあ、皆呼んでお花見しよ。ちょうど時期もお彼岸、先祖が帰ってきてるしね。毎年この頃は皆でお花見するのよ。今年は裏の墓地周りにまいた種が綺麗に花咲かせて一面花畑になってるからそこで」
ああ、東子が「あたしが子孫に伝えるなら憎しみでなく花を」って言って植えてたな。あそこには姉さんの墓もある……。
自称『生き神』に騙され操られ、弟の俺を封じ、それを死の間際に知って絶望の中死んだ姉。
「お姉さんの魂はあそこにはないの知ってる。けど、もう罰は受け終わって転生待ちなんでしょ。一度会って話しといたほうがいいと思うわよ。あんたなら神なんだから呼ぶことできるんじゃないの?」
「……できなくはない」
でも姉さんは俺に会いたくないはずだ。
「一応うちの先祖にイタコがいて、あたしも降霊術習ったことは習ったんだけど下手でね。まぁそれでもなんならやろうか?」
「……いや、いい。姉さんは俺の顔なんか見たくないだろう」
東子が俺の頭を優しくなでた。
「お互い自責の念にいつまでも囚われてるべきじゃない。どっちのためにも会うべきよ。お姉さんだって転生したら別人になり、これまでのことは忘れるでしょ? そうなる前に……ていうか、きちんと一つの人生ケリをつけて、新しい来世に送り出してあげるべきよ」
その言葉はすとんと俺の胸に落ちた。
……ああ、そうか。ごめんと謝るだけが、姉さんのためだと大人しく耐えるだけが術じゃなかった。
姉さんのためを思うなら、ちゃんと終わらせて新しい人生へ送り出してあげるべきだったんだ。
俺は静かに微笑んだ。
「……東子はいつもこうやって、俺を助けてくれるな」
「第三者からでないと見えないものもあるだけの話よ。じゃ、せっかくだからうちの先祖だけじゃなくあんたの配下全員呼びなさい。楽しいことはみんなでやればもっと楽しいでしょ」
「うん」
化け物と忌み嫌われた幼少時、悪神とされ洞窟に閉じ込められていた頃に願ったこと。誰か一人でもいいから俺を信じて好きになってくれないだろうかと。
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