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少女と雨宿り
好きだなぁ。
店のやつも、インスタントもカップ麺も。
久々に脂っこいの食いてえなぁ。
頭の中で、ありもしないラーメンをすすっていた時だった。
「誰かいるの」
女の子の声がした。
俺は、公園の遊具の中にいた。ゾウの形の滑り台で、中にも潜れるやつ。雨宿りのつもりだった
「いるよ」
あたりは真っ暗で、春先だが冷え込んでいる。児童が出歩くには遅い時間だ。不思議に思っていると、少女は覗いていた遊具の穴から中に入ってきた。俺は慌てた。
「家に帰らないのかい?」
穴から入る僅かな光から、少女の顔がうっすら見える。年の頃は、10歳くらいだろうか。まだ幼さが残るが、その瞳は力強く勝気な印象を受ける。
「今、鬼が来てるから」
少女は確かにそう言った。
鬼とは何だろう。
「そう」
気になったが、聞くことはしなかった。この生活を始めてから、あまり他人に肩入れしないように気を付けている。
「ねぇ、おじちゃんは雨宿り?」
雨宿り。
長い、永い雨宿り。
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