5人が本棚に入れています
本棚に追加
おにぎり
昼間は街中を徘徊し、夕方に公園に戻ってきた。ちょうど見計らったように、凛花はやってきた。ベンチに座っていた俺の前に立つ。
「こんにちは」
頬の腫れはだいぶ引いたようだ。元気そうな姿にホッとする。
「この間は無事に帰れたんだね」
「うん。それでね。今日はお礼にと思って」
そう言うと、おずおずと銀紙に包まれたものを渡してきた。開くと、不恰好なおにぎりが二つ。
子供でも、俺の状況を分かってるのか。食べ物をあげれば喜ぶってことが。
一瞬情けなくなったが、気を取り直し、笑顔で凛花に言った。
「ありがとう。大事に食べるよ」
凛花はにっこりと笑うと、俺の手からおにぎりを1つ取り、隣に座る。
一緒に食べようってことか。
おにぎりを頬ばる凛花を横目に見ながら、俺もかぶりつく。しょっぱい、けど、今まで食べた何よりも、旨い。
食べ終わると、取り留めのない話をした。俺の住んでいた港町の話や、今まで転々と過ごした色んな場所の話を。
幼い凛花にはどれも物珍らしかったらしく、目を輝かせて聞いている。
それが嬉しかった。
「ちょっと」
咎めるような声がした。いつの間にか知らないおばさんが立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!