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「あなた、その女の子に何してるの?」
「え?」
いたずら目的な浮浪者と思われているようだった。
「その」
俺が話す度に、おばさんの顔が険しくなる。困り果てていると、
「親戚のおじさんなの」
凛花が、はっきりとした声で言った。え、とおばさんの戸惑うような声が聞こえる。
「親戚? どう見たって」
「人を見た目で判断しない方が良いですよ、おばさん」
「なっ」
おばさんはひどく憤慨した様子で、最近の子は口が悪いとか、言いながら去っていった。
胸をな撫で下ろす。
「なぁ、凛花」
俺にはもう。
「智おじさん」
凛花は、まっすぐこちらを見ていた。
「また、明日も来て良い? 凛花、おじさんの話もっと聞きたい」
ダメだって言うべきだった。この子のためには。
「ああ、もちろん」
でも言えなかった。
自分の名前を呼んでくれる存在を、失いたくなかった。
凛花は、俺が話をする代わりに、食べ物を差し入れてくれた。束の間の穏やかな日々だった。この公園にはホームレスがいないため、場所の取り合いもなかった。昼間は街中をうろつき、夕方になれば公園で凛花を待った。
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