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「凛花には、しつけをした! 当然だろう! 浮浪者の親戚なんて嘘をついたんだ」
あの時の、おばさんの顔が思い出される。やはり、止めておくべきだった。
会うのを止めるべきだったんだ。全て、俺のせいだ。
凛花は無事なのか? 彼女を助けたい。助けたい。
その子を助けたいと思うなら。
力の限り目の前の男に体当たりをした。不意をつけたらしく、そいつは倒れた。
その隙をついて、あの時の公衆電話ボックスへ向った。小銭は予め拾ってあった。辿り着くと、シワクチャになったメモ書きを取り出し、急いで番号を押す。発信音もなく声がした。
「もぉーし、もぉし」
繋がった! あの、間延びした話し方!
「もしもし」
「ああ、田山智さんですねぇ」
何で俺の名前を!
いや、今はどうでも良い!
「助けてくれ! 凛花が、実の父親に殺されたかもしれないんだ!」
「それで?」
「俺のことも殺しに来てる!」
「それで?」
「それで」
それで?
「凛花ちゃんは、まだ生きているかもしれない。その場合、あなたを殺してから、その父親が向かう先は?」
もしかしたら。
「凛花の、ところ?」
「せいかーい」
鬼が凛花のところに戻ったら、きっと殺されてしまうかもしれない。
「困ってるなら、鬼退治、してあげても良いよ」
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