鬼と殺人鬼

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 からかっているような声だった。  鬼退治?   凛花は言っていた。鬼退治を殺人鬼に頼む、と。  もしかして、こいつがその? 「してくれ」  絞り出すように叫んだ。 「あの鬼を殺してくれ!」  なハハっ。笑い声が、天井から降ってきた。 「いーよ。ただし現金で10万円、いただきまっす」  ボックスの屋根から、人が落ちてきた。  受話器を握ったまま、その後ろ姿を見た。耳付きの黒いロングパーカーを着ている。声からすると、女らしかった。 「こいつだね」  鬼が追ってきていた。見れば、手には小さいがナイフが握られている。隠し持っていたようだ。 「お嬢さん、そこをどいてくれないかな? 社会のゴミを掃除しないといけないんでね」  そいつは容赦なく、ボックスの前に立つ女に刃先を向けた。 「依頼を受けたところだから、どけないよ」  鬼は怪訝そうな顔をする。 「依頼?」 「あなたを殺すよーにって」 「は? 君は一体」  なハハっ。笑い声が響く。 「僕はメルト。とある所ではすこし有名な、殺人鬼さ」  メルト? おかしな名前だ。本名なのか?  鬼の表情が変わる。 「本物か、お前。イタズラじゃないだろうな?」 「信じる、信じないは、あなた次第ー! 何ちゃって」     
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