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鬼は、財布から札束を取り出した。
「15万はある」
にやりと、鬼は歯を見せて笑う。
「君たちの話は聞こえていたよ。10万で代わりに人を殺してくれるんだろう。もっと高い金で契約してやる。ま、その浮浪者は、一円だって払えないだろうがな」
事実だった。頼んだものの、金を払うアテなんてない。
「ほら、今すぐくれてやる」
「本当? ありがと!」
メルトは、喜び声で鬼に近付き、金に手を伸ばす。ダメだ、これで2対1じゃないか。
何だ、このメルトって奴は!?
半ば諦め、ボックスからいつ抜け出そうか、思案していた時だった。
「ゴボボァァっ」
鬼から、吐瀉物が噴き出した。流れるように、止まらない。当たり前のように、どんどん出る。
メルトが、男の頭を撫で回している様子が見えた。
「何で、ブベブァァ」
「クライアントを選ぶのは僕だよ? お金なんて、誰からもらってもいーのってあれ?」
パタリと、鬼の体は倒れた。
「もう死んじゃったか」
メルトは、男が持っていた札束を取る。
ボックスから出てメルトに近付くと、彼女は身軽にボックスの屋根に飛び乗った。背を向けているから、顔は見えない。
「ご依頼ありがとうございました、なハハっ」
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