殺人鬼の噂と公衆電話

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「パパの休みにはこの公園に来たの。ママの作ったお弁当を持って。パパとボール遊びもしたんだよ。楽しかった」 「そう」 「最近は来てないんだ」 「どうして?」 「ママがいなくなったから」  お気に入りのぬいぐるみがなくなったような、そんな言い方だった。 「それから、パパがおかしいの」 「おかしい?」 「ぶつの」  刹那、雨音が遠のいた。   「きっとあれはパパじゃなくて鬼なの。ママが昔話してくれた、良い子にしていないと出る鬼」 「おに」 「そう、鬼が入れ替わったの。パパに戻るまで、ここに隠れてるの」 「そう」  鬼が入れ替わる。  たくちゃんの冷たい瞳を思い出す。あの時の彼も、鬼が入れ替わっていたのだろうか。  荒唐無稽な話だ。 「今度ね、鬼退治を頼もうかと思ってるんだ」 「誰に?」 「学校で噂になってる、殺人鬼に」 「殺人鬼?」  答えの代わりに、小さなくしゃみが聞こえた。 「大丈夫かい?」 「うん」 「もう帰ったらどう?」 「ん」  小さな、霞むような、声。 「おい、本当に大丈夫か?」  反応がない。  思わず近付いて、肩を抱いた。嫌がられるかと思ったが(かなりの時間水浴びさえしてないので)、素直にされるがままだ。額に手を当てると、酷く熱かった。 「熱があるじゃないか」  ぐったりとしている。 「おい」  意識がないようだ。もしかしてこのまま。     
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