殺人鬼の噂と公衆電話

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 凛花を担いだ。遊具から連れ出すと、雨の中を走った。 「おい、君の家はどこだ?」  答えない。  慌てる俺の目の前に、明るく光る、公衆電話ボックスが目に入った。  昔聞いたことがある。  110番とか、119番とか、緊急性のある番号は無料でかかると。  急いで公衆電話に向かう。ボックスの中へ入ると、凛花を優しく下ろした。  急いで番号を押す。  110番、いや、救急車は119番だ。  繋がらない。もう一度。繋がらない。  俺が使った公衆電話は古いタイプで、赤いボタンを押してから番号を押すものだったのだ。  そうとは知らない俺は焦った。 「どうしてだよ、くそ」  パニックになり、受話器を置いた時だった。  プルルる  電話がかかってきた! きっと救急からだ。  すぐさま受話器を取る。 「もしもしぃ」  緊急通報の電話の割には、嫌に間延びした話し方だった。聞き取りづらいが、公衆電話でも電波が悪いと言うことはあるのだろうか。気のせいか、まるで声を変えている、ような。 「もしもし? 女の子が熱を出して倒れてます。雨にも濡れていて、場所は」  しまった! 土地勘が全くない、  ここはどこだ? 「○○町、三丁目4番付近ですねぇ」     
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