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驚いた。詳しい住所は分からないが、○○町であることは間違いない。公衆電話からの通報だと、場所までわかるのか?
俺の思考を見透かすかのように。
「わかりますよぅ。あなたのいた公園から、一番近い公衆電話がこれですからぁ」
何言ってるんだ? こいつ。
「もしもし、そちらは救急ですか?」
電話口の向こうで、笑い声が聞こえた。おかしくて、仕方ないと言う様子だった。
「何がおかしいんだ」
俺は苛立った。笑っている場合か! 子供が苦しんでいるのに!
「ああ、すみません、それでぇ、あなたはその女の子を助けたいんですか?」
「当たり前だろ! だから電話してる!」
「どうしてですかぁ?」
「どうしてって」
座り込んでいる凛花の顔を見た。苦しそうだ。
「助けることに、理由なんていらない」
電話の向こう側が、一瞬静かになった。
「そう。その子を助けたいと思うなら今から言う番号に電話して。メモと筆記用具は台にあるはず」
見渡せば、台の下の物おきに本当にあった。電話の声に言われるがまま、番号をメモした。
「ではでは、またあなたの気が向けば。なハハッ」
気付くと電話は切られていた。冷静になれば、明らかに救急の電話ではない。電話番号を書いたメモを握りしめ、何故か捨てずに服のポケットに突っ込んだ。
「智おじさん?」
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