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この国に来て数ヶ月になるが、大国ということもあり、勉学はベルリング王国と比べ物にならないほど進んでいる上に教える内容も高度で、授業についていくのに必死だった。休日は予習復習で終わってしまい、街中を探索する暇などなかった。
「夕食のあと、家抜けられんだったら、夜景のキレイなとこ連れてってやるけど、どう?」
森を抜けた小高い丘の上から見下ろす街の明かりが綺麗だと言う。アランと見る景色なら、どんな景色でも見たかった。
「行く!見たい!」
一も二もなく賛成したカイルに、嬉しそうにアランが笑う。
それだけでなんだかドキドキした。
「じゃ、決まり。九時にカイルの家の前で待ってる」
ひらひら手を振って去って行くアランの後姿にもドキドキした。子供にしては遅い時間に二人だけで。特別な秘密を共有してるみたいでワクワクした。
一つしか歳は違わないのに広い肩幅で羨ましい。背が高くてバランスの取れた体型で恰好いい。何をするにしても自信に満ち溢れてる。その自信は、アランが生まれながらにして持っている、人を惹きつける何かであって、惹きつけられた人々の信頼や羨望が作り上げたものだ。
羨ましくて嫉妬するのに、傍にいると安心していられる、離れ難い不思議な存在になっていた。消えた背中を目で追い、目の前にいなくても思い出せるほど、アランの背中を見ている自分に複雑な気持ちになった。
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