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【 邂逅 】
慌しいノックの音に、フェリスが立ち上がってドアを開けに行った。ドアの外で敬礼していたのは、見張り番だ。
「お寛ぎ中、失礼致します!我々の船の前に海賊船らしき船が現れました!」
やはり……。恰好の獲物と知って狙いを定めてきたのだ。
「それで相手は?」
「相手も一隻です。しかし船足が速く、どちらに舵を切っても追いつかれるものと思われます」
振り向くフェリスの肩越しに、見張り番に命令を出した。
「分かった。王子は我々がお守りする。操舵手に回避を、砲撃手に弾の装填準備を伝えろ」
「はい!」
転びそうになりながら走り去って行く後姿に、やはり戦闘能力を期待してはいけないと思い知らされた。
「役に立ちそうにないね」
フェリスの言葉に、ローランドとカイルが頷く。それぞれが無言で戦闘準備を始めた。宝石がついた装飾用の剣を抜き、実践用の剣を腰に差し替えるローランド、懐に銃を、腰に剣を差すカイルとフェリス。
いざとなったら、ローランドの命だけが助かればいい。
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