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【 邂逅・続き 】
現在の立場上、カイルがローランドについて行くのは至極自然な成り行きで、アランの居場所は大きな商家の跡取り息子だから、あちらに着けば簡単に掴めるだろう。そう思っていたのに、目の前にいるのは海賊。
「あー……、つか、誰?」
「俺だよ、俺!カイル!同じ学校に通ってた……、丘にも連れて行ってくれた!」
黙って考え込んでいたが、諦めたように溜息をつき、
「悪い。全然分かんねぇわ」
苦笑された。嘘をついてると思われたんだろうか。
「っ、そりゃ短い期間だったけど…っ、一緒に丘に行って、俺が穴に落ちて、助けてくれただろ?」
これは一生忘れられない思い出のはず。
「だから知らねぇんだって。確かに俺はアランって名前だけどな、カイル……だっけ?名前も顔も覚えねぇんだ。人違いじゃね?」
冷たく突き放す口調には多少の困惑が混じっていて、覚えてないというのが嘘ではないことを知らしめてくる。
他人の空似なんかじゃない。こいつがあのアランだという確信もある。右目の傍にある泣きボクロも、話すときの独特の抑揚も、癖も仕草も記憶の中のアランと同じで、間違えるはずがない。
懐かしいな。
元気だったか?
あのあと、どうしてた?
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