3人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
そんな穏やかな会話じゃなくて、お前のせいで等の恨み言でもいい、何かしら覚えててくれて、ぶつけられるものだと思っていた。
眉間に皺を寄せ、じっと睨んで考えても思い出せないようで、目を閉じて軽く息を吐き、微かに左右に首を振った。
その微かな動きで、二人の思い出全てを否定された。
「う…そ、嘘だろ?だって、俺がアランを見間違えるわけない!自分でアランだって言った!なのに、なんで覚えてないの?!」
そんなに俺のことが嫌いだった?
思い出したくもないくらい、嫌な思いをさせた?
覚えててくれたら謝れるし、言い訳もできるのに、それすらもさせてくれない。
「知らねぇって言ってんだろ!」
ビリッと空気が震える勢いで怒鳴られた。
「っ、…………」
唇が震えて何も言えなくなったカイルの肩にフェリスが肩をぶつけ、緩く首を振った。交渉の邪魔になるから、もう喋るなという意味だ。
カイルがまずしないといけないこと。王太子ローランドの安全を優先し、無事、ナザニエル帝国に送り届けることを第一に考えなければならない。
胸が苦しくて、喉が詰まって上手く呼吸できない。
身体の奮えは肩に置かれた手からフェリスに伝わってしまってるだろうがコントロールできなくて、肩で押されるまま一歩後ろに下がった。
「まぁ、この話はそのくらいにして」
最初のコメントを投稿しよう!