vol.1 遺跡

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そもそもこんなにでかい上に、開けた場所にある建物が、最近発見されたばかりだという話自体がおかしいと八郎太は思っている。どうせ砂川の町興しのために話題作りをしようと、それっぽいプレハブを建てたのだろうというのが八郎太の見解だ。 もちろんプレハブだということに気付いた人もいるだろうと考えていて、そういった人には金を握らせて黙らせているのだろうと考えている。大人は汚い部分も大いにある。 だが八郎太はプレハブに金を払うのは嫌だった。それならば好きな映画や美術館に金を落とす方がよっぽど有意義な使い方だ。 「いやでもさ、考えてみろよ。発見されたのは2日前だぜ。2日で何もないってことが証明できるか?」 「本物の遺跡じゃなくて、プレハブなんじゃないのか?プレハブを調べても仕方ないから諦めたんだろ」 「俺もプレハブってことは考えたよ。だって何百年も前に建てられたように見えるもんが、突然現れるっておかしいだろ。でもさ、良く考えると、この規模のプレハブが、ある日突然できるってのも変な話だよな。それまで全く、工事の気配すらなかったにも関わらずだぜ。そう考えたら、不思議な力で古代の遺跡が突然出現したって考える方が自然じゃないか?」 それに、そっちの方がロマンがあるしな、と甲賀は付け加える。 ロマン。確かに甲賀はロマンに生きる見た目をしている。純倭国人間のくせに、彼方の英国圏に生きる男性のように金髪青目という見た目をした甲賀は、ロマンのために人生をかなぐり捨てそうだ。そこまで刹那的に生きてはいないみたいだが。 むしろ、純倭国人らしく黒髪に黒目という見た目をした仁沙の方がよっぽど刹那的だった。楽しそうなことを見つければ瞬時に飛びつく彼女は、八郎太と同じくロマンを語るような見た目をしていないくせに、今回もロマンある話に反応して目を輝かせている。 「さっそく出発よ!砂川へ!!」 甲賀に全く似ず、堅実を絵に描いたような色合いである黒髪黒目をした八郎太は、これからの電車賃および遺跡見学料のことを考えて、溜め息をついていた。 ********** 「暑いわ……。死んじゃう……」 砂川はさすがに砂漠があるだけあって、地元よりも暑さが際立っていた。
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