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目覚めのいい朝だった。髪もメイクも上手く仕上がり、体調も万全だ。
ーーー智也のおかげだわ。
玲子は、テレビのどこかで耳にした曲をハミングしながら絶好調で会社へ向かった。
「おはようございます。鹿島さん!」
会社の前で、玲子は後ろから挨拶をされた。
振り返って山崎を見た玲子は、なんとなく気まずさを覚えた。
酔っぱらった山崎が瞳を抱いた日、『玲子』って何度も呼んだと、瞳から聞いていた。それから玲子は、まともに山崎と顔をあわせられなかった。
「おはようございます…」
ぎこちない笑顔を返すと、山崎が隣に並んできた。
「鹿島さん、あの、今日の夜って空いてますか?」
「え? 夜?」
会社に入り、警備員に社員証を見せてエレベーターホールへむかった。
「今日は……」
断わりかけて、玲子はふと考えていた。
ーーーもし、山崎さんが私を好きなら…。好きな相手に意味もわからずに避けられたりしたら、きっと傷付く。
「えっと、何か話?」
山崎は、赤くなって頭をかいた。
「あ、はい。ちょっと」
「わかったわ。空けとくね」
「うん。ありがとう」
男らしい感じの少しもしない山崎。少年のようで確かに瞳が母性本能をくすぐられたと言うのがわからない訳では無かった。
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