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石畳(いしだたみ)に下駄と雨の音が響いている。 「はぁ~義人(よしと)遅いなぁ~」 少し乱れた日本髪を気にもとめず、宿屋の二階から行き交う 蛇の目(じゃのめ)を眺めている妖艶な女性がいた。 少し着くずした襟元から白い肌が見えている。 ふと女性は向かいの路地に入っていく男女に気がついた、 「あれはこの宿屋の娘のさよさん?」 女性の目が赤く光った 『さよさん私と一瞬に逃げてくれ』 『雅也さん無理よ弟はまだ小さいし体の弱い母を置いて行けないわ』 『私のこと愛してくれてないのか』 『愛しているわ、お願いお父様を説得して』 『何度も言ったさ、聞く耳を持たないんだ父達は』 『もう少し待って、母にはちゃんと言いたいの』 二人は抱き合い唇を重ねた (あれはこの宿場町にあるもう1つの宿屋の息子じゃない、 ん?犬猿の仲って聞いてたけど)
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