0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
すきになること
わたしは最初、きゆのことが苦手だった。
同じ部署で、同じ業務を担当することになったけれど。
タイプが真逆で、お互い仕事に対して頑固で、ペースも合わない。
とわたしは感じていた。
きっかけがあったのは2月の末のこと。
業界的に『超』繁忙期なそのとき、きゆは公休日だった。
きゆと業務を分担している私は
その日の朝からてんてこまいで正直、精神的に参っていた。
昼過ぎにどうしても終わらない仕事に
半べそをかきそうになっていたときに助けてくれたのが、
きゆからの社内ツールでの1本の連絡。
「大丈夫ですか?どうしても厳しかったら今から行きますけど!」
正直、公休日の出勤なんて上司は認めない。
だから、行きますの連絡なんて絵空事だってわかってる。
でもそんなことはどうでもよかった。
期限なのに仕事が終わらない。
そんなわたしに唯一声をかけてくれたのが
そのとき社内にいた他の誰でもなく、きゆだった。
正直、キュンとした。
人からすればきっと些細なことなのだろう。
でもわたしにとっては、とても大きな出来事だった。
最初のコメントを投稿しよう!