すきになること

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すきになること

わたしは最初、きゆのことが苦手だった。 同じ部署で、同じ業務を担当することになったけれど。 タイプが真逆で、お互い仕事に対して頑固で、ペースも合わない。 とわたしは感じていた。 きっかけがあったのは2月の末のこと。 業界的に『超』繁忙期なそのとき、きゆは公休日だった。 きゆと業務を分担している私は その日の朝からてんてこまいで正直、精神的に参っていた。 昼過ぎにどうしても終わらない仕事に 半べそをかきそうになっていたときに助けてくれたのが、 きゆからの社内ツールでの1本の連絡。 「大丈夫ですか?どうしても厳しかったら今から行きますけど!」 正直、公休日の出勤なんて上司は認めない。 だから、行きますの連絡なんて絵空事だってわかってる。 でもそんなことはどうでもよかった。 期限なのに仕事が終わらない。 そんなわたしに唯一声をかけてくれたのが そのとき社内にいた他の誰でもなく、きゆだった。 正直、キュンとした。 人からすればきっと些細なことなのだろう。 でもわたしにとっては、とても大きな出来事だった。
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