【 揺れ 】

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【 揺れ 】

 翌日、島民を集めた場で、ローランドが王太子だということは隠してだが、客人として紹介された。その足で学校になってる建物に行き、勉強を教え始めた。学校とはいえ、ただ机と椅子があるだけの部屋だ。ちゃんと教えるとなると足りないものばかり。それぞれ思いついたものを書き留めていき、書き留めた中から必要なものと、今すぐ必要ではないものに分けていった。  着替えの入った衣装箱も奪われた物品の中に入っていたので、サイネス達の服を借りた。身分を隠しての滞在になるため、着ていた服以外は売れそうなら売り払ってもらって、売れた金で借りた服と同じような服を買ってもらうことになっている。  窮屈で動き難い宮廷服からの解放感もあり、すぐに島民とも打ち解けられた。どうせ掃除するのなら、とサイネスが三人に一つずつ部屋を与えてくれた。  何事もなく三日が過ぎ、用意して欲しいものが纏まった。学校に連れて行き、設備を見てもらいながら、なぜその物品が必要なのかを説明した。黒板と教科書と、紙とペンとインク。 「教科書って言っても、俺らじゃどれがいいのか分かんなくない?」  近くにいた子の書いた紙の束をパラパラ捲りながら、アランが呟く。     
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