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「良かったらまた一緒にお茶しようって」
アランの通訳に、老人に向かって頭を下げた。
「ありがとうございます、美味しかったです。ぜひまたご一緒させてください」
カイルの言葉を老人に通訳してもらうと嬉しそうに笑ってくれた。『また』があるのか分からない。あればいいなと願う。
細い路地を歩いて行くアランとカイルに向かって手を振る老人に、手を振り返した。貢ぎ物を入れていた袋は空っぽになってアランのポケットにしまわれている。全て売れたみたいだ。
「あれ、なんだったんだろ?」
いい香りがしたお茶だった。
「ご馳走になったやつ?あの匂いは茉莉花茶だな」
「茉莉花茶?」
「茶葉の他に乾燥させた花びらが入ってるんだったかな?」
「そっか、だから花の匂いがしたんだ」
お菓子ともお茶とも言ってないのに、お茶の方だとあっさり当ててきたことに、このときは気づかなくてそのまま会話していた。
この地域でもあまり手に入らない、珍しいお茶らしい。
並んで歩いていると、アランがふっと微笑った。
「セージやサイネスとも一緒に行ったことあるけど、お茶に誘われたのはカイルだけだな。しかもお土産まで貰ってんの。ずっと俺の服の端、掴んで離さなかったじゃん?子供と間違われたのかもな」
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