【 揺れ 】

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 からかう口調に、頬が赤く染まった。 「しょうがないだろ。言葉は分からないし、来たことない場所だし」 「だよなぁ、お貴族様には縁の無い場所だもんな」  胸が痛み、息苦しくなった。  自分とカイルとは違う。そう断言されたようで苦しい。 「でも良かったじゃん。顔色、ちょっと良くなってるし」  頬に突然触れられて、ビクッとしてしまった。驚いた表情のアランに、失敗したとすぐに後悔したが、特に何を言われるでもなく、行きとは違い、カイルの歩調に合わせて歩いてくれた。 「じゃ、買い物して帰るか」  大通りまで出たとき、大きく伸びをしたアランが、本来の目的を思い出させてくれた。買い物したら帰ってしまう。帰ってしまったら二人きりになれる時間がない。どう引き止めるか考えてみても、手段がなく、導かれるまま店に入った。  盗品を詰めていた麻袋に、子供達の勉強に必要な物が詰められた。黒板は大きいから後回しだ。本屋でローランドとフェリスに指示された教科書、図鑑や絵本も購入すると、結構な荷物になってしまったのに、更にカイル達の着替えも一緒に入れて持ってくれた。半分持つと申し出たのだが、肩を痛めてるのを理由に断られてしまい、固持しすぎても諍いになるだけなので諦めた。     
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