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一言一句違わない会話。じわっと胸の奥が熱くなる。ねえ、この会話、前にもしたことがあるんだよ?喉まで出かかってる言葉を飲み込む。思い出してくれたわけではない。けれども、やっぱりアランはアランのままだった。嬉しくて、でも淋しくて、握った手に力を込め、前を行くアランの背中を見つめた。
連れて行かれたレストランは通りにまではみ出して客席が設けられているのに、ほぼ満席状態。端の方に空いてる席を見つけて座った。異国の文字で書かれたメニューが読めるわけもなく戸惑っていると、アランが適当に注文してくれた。
「本当に食べれないからな」
「ああ、カイルのは飲み物とデザートにしといた。デザートなら入んだろ?」
入るのかな?と腹を押さえていると、アランの口許が緩んだ。
頬杖をつき、穏やかな目で見つめられる。そっと抱えていた、老人から渡された袋をテーブルに置いた。
「それ、何が入ってた?」
「これ?」
中身を確かめてなかった。袋に入っていたのは、さっき食べたお菓子と、缶に詰められた茶葉。茶葉からはお茶よりも濃厚な花の香りが漂っていた。
「お前、すげー気に入られたな。こんだけの茉莉花茶、買ったら凄い値段するよ?お菓子も何気に高級店のだし」
「そうなんだ?」
そんなに高価なものを貰ってしまって良かったんだろうか。突然、不安になってきた。
「それだけカイルとのお茶が楽しかったんだよ」
「……なにも喋れてなかったのに」
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