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「あそこに来る客って、俺らみたいなのばっかだからな。カイルみたいなのが来て嬉しかったんじゃね?素直に貰ってやんのも年少者の務めだろ」
「年少者って……もう成人してんのに」
「あのジイサンからしたら充分、年少者だって。今度はこっちから何か持ってけばいい」
「……うん」
頷くと、くしゃっと頭を撫でられた。今度があればいい。アランは今度の機会を作ってくれるんだろうか。もしダメならアランに託すという手もある。母国の特産品を思い浮かべるカイルの隣りで、鼻歌混じりに景色を眺めているアランの口許は笑みに似た形になっている。心穏やかな今なら……。
「あのさ……、」
意を決し、切り出そうとしたところ、アランが注文した料理と、カイル用のデザートと飲み物が運ばれて来て、よっぽど腹が減っていたのか、がっついているアランの食事が終わるのを待つことにした。
「一口くらいなら食えんだろ」
一口大に切ったものをフォークに刺して口許に突きつけられ、仕方なく口を開けたら口の中に放り込まれた。
「美味しい」
「な?食っとかねぇと損すんぞって言った通りだろ?」
上機嫌で平らげる姿が微笑ましく、誰もこいつが近海で恐れられている海賊だとは気付かないだろう。最後の一口を口に入れるのを見届けてから、再び話を切り出した。
「アランはさ、昔のことって、どのくらい覚えてる?」
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