【 揺れ 】

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「昔のこと……?」  フォークを咥え、暫く考えていた。 「普通じゃね?」 「例えば、どんなこと覚えてる?」 「例えばって?」  聞き返されて、言葉を慎重に選んだ。 「例えば……家族のこととか、なんで海賊になろうと思ったのかとか、どうやってなったのかとか、……学校のこととか」 「なんでそんなこと、喋んねぇとなんないわけ?」  咥えていたフォークをカチャンと皿に落とした。  再会したときにカイルが言ったことまで覚えてないんだろうか。 「今まで回りにそういう奴いなかったから、聞いてみたいんだよ」  スッと逸らされた視線は、堅く拒絶されてるみたいに感じた。  足を組み、椅子に深く腰掛け直すと、ゆっくり口を開く。 「あー…まぁ、オヤジの仕事の関係で、うちの家には外国人の出入りが多くて、気がついたら他所の国の言葉を喋れるようになってたとか?」  面倒臭そうにしつつも、思い出を語り始める。  一体、どこからどこまでが抜けていて、どこまでを覚えているのかを知りたくて質問した。掻い摘んだ生い立ちとして話してくれた内容は、昔聞いたことがある話とリンクする。家は割りと大きな商家だったこと、歳の近い弟がいること。     
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