【 揺れ 】

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「勉強はそんな好きじゃなかったけど、学校に行けば友達に逢えるから行ってた。その頃からかな……人と違うことしたいと思ってて、何があんだろ?っていつも考えてた。原因は覚えてねぇけど、家の仕事が上手くいかなくなってきてさ。もう学校は卒業してたし、家飛び出したとこでサイネスとセージに逢ったんだ」  相応の責任を負ってもらう。あのときにカイルが世話になっていた家の夫婦が言った科白が脳裏を過ぎり、疑念が湧く。 「商売が上手くいかなくなったのって、どれくらいのとき?」 「さぁ?ちょっとずつ悪くなってったんじゃねぇの?」 「学校帰りに寄り道とか、よくしてた?」 「そんなの毎日すんだろ。カイルはしなかったんだろうけど」  骨折を理由に帰国させられたあとに通わされた学校は、貴族の子弟が学ぶために近年設立された王立の学校だった。ナザニエル帝国で通っていた学校のように徒歩での通学ではなく各家の馬車での送り迎えで、学校と家を往復するのみ。寄り道なんてできなかった。時々、自分の家の馬車を帰してフェリスの家の馬車に乗ってダンヴァーズ家に行ったり、ローランドに誘われて王室の離宮に言ったりはしていたが、気軽な寄り道とはいえない。  長年通っていた自国の学校より、たった数ヶ月のアランとの思い出の方が鮮明で。 「したよ。学校帰りに美味しいパン屋に行って、買い食いしたりしてた」 「へえ、貴族の子供って、馬車で送り迎えされてて、寄り道とかしねぇんだと思ってた」     
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