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と手を伸ばしてくる。躊躇ったものの、手を掴んで引っ張り上げてもらった。船室の一部に敷きつめられたラグの上、麻袋を置いた場所に座り、袋を抱えるのを見届けたあと、操舵室に向かった。
多分、アランとの接点を持たせるため、セージとサイネスが仕組んだことだ。それをローランドもフェリスも承知していること。この三日だけでも、過去を覚えていないアランを実感させられたが、島では二人きりになれる場所はない。常に誰かの目があり、アランはいつも誰かに囲まれている。
大して秘密な話ではないが、島民のいる前でこの話になってしまうと、カイルの身分がバレてしまう。カイルの身分がバレると、必然的にローランドやフェリスの出自もバレてしまうから言えないでいた。
六人で生活してる洞窟ででも話せばいいのだが、これまでと違う生活に慣れるのに精一杯で―――というのは言い訳だ。
また否定されるのが怖くて、口にできなかった。
それじゃあ、いつまでたっても溝は埋まらない。
静かに動き出した船。
誠心誠意謝るのは勇気がいるし、大変な精神力が要る。挫けてしまいそうになるけど、いつまでもアランだけに重荷を背負わせていてはダメだ。覚えている、覚えていないが問題じゃないのも分かっていた。ただ、謝るきっかけが欲しいだけ。謝らせてもらいたいだけ。
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